かわいい子には旅をさせよ。
昔の言葉です。実は英語にも似た意味の言葉があります。
If you love your child, send him or her out into the world.
人が成長するときには、少しチャレンジすれば達成できるような負荷が必要です。これは、体験学習理論として心理学的にも説明されています。
寺子屋でも、子どもたちによく話しています。
「仲良しがいることも大事。安心できる場所だからね。でも、それだけだと成長はしない。日頃話さない子、自分とタイプが違う子とも関わってみようとすること。そうすると、成長するよ。もちろん、みんなとは親友にはなれないけど、一緒に活動するときは協力できる子になってほしい。」
教員時代も、寺子屋でも必ず話します。でも、話すだけではただの丸投げです。
いろんな人と関わることが楽しいと感じられる場面を作り実感することが大事なんです。語るのは第一歩、それを経験させる、しかも楽しみながらが重要です。
僕が、とてもよく使うのがプロジェクトアドベンチャーというアクティビティです。これは冒険教育と呼ばれるものです。大先輩KAIさんの本を重宝しています。
例えば、じゃんけん一つにしても、「2分間でどれだけの子とできるかな?」と呼びかけるだけでも、全然違います。楽しみながらいつの間にか、関わっている。大事なのは、アクティビティの後の振り返りです。「自分から声かけるのが得意な人?待つのが得意な人?」そんなことを聞きながら、いろんな子がいることをみんなで分かち合います。
みんな違うから、一緒にいいチームを作っていこうという気持ちを持てるように関わっていくことが重要です。
こんなことを、繰り返し繰り返ししていくことで、チーム力が上がっていきます。
いつも同じメンバーで固まっていた子が、いろんな子と関わり始めます。これは大きな成長です。そこをすかさず、認める。そうすると、良い影響が周りに広がり始めます。
かわいい子には旅をさせよ。つまりチャレンジを十分にさせてあげることが大事です。
寺子屋でも、僕の目が気になるような関わりを僕がしてしまうと、子どもは存分にチャレンジできません。もちろん、安全や心の安心に関わるようなことには介入するときもありますが、それ以外は空気のようになること、もしくは一緒に楽しんでしまうようにしています。
子どもの時間で子どもは成長するからです。
教員をしていると何度も授業参観があります。授業参観は、子どもはいつもと違う顔を見せます。なぜなら、親が見ているからです。先生が、いつも以上に優しいからです。これはこれで、成長している姿です。親に良いところを見せたいと願う子の気持ちは、とても純粋で素敵です。
教師は教師で、みんなが活躍できるように授業の構造を変えます。せっかく見に来てくださっているのだから、頑張っている姿を見せてあげたいからです。
こういう時間も大事でしょう。僕も我が子の参観日は楽しみです。
でも、毎日が参観日だったら子どもは成長するでしょうか?
もし大人が、自分の子どもだけでなく、全力でいろんな子どもと遊んで学ぶのであれば、とてもいいかもしれません。
しかし、後ろに立って毎日、子どもの様子を覗いているだけだとしたら、子どもたちは子どもの時間をどうしても過ごせなくなるでしょう。
決して参観日を否定しているわけではありません。むしろ、もっと参観できる機会を作るべきだと職員会議で話していたタイプです。参観日は、ハレの行事。祭りが大事なように参観も大事です。
でもハレばかりでは育たないのです。ケが大事です。日常こそ育ちです。
育つのは子ども。育ちやすい環境を整えるのが教育の仕事です。
心の安心、身体の安全が守られる環境さえ整えたら、あとは子どもに任せる勇気が必要なんですよね。
こんなことがありました。小学校には朝会という、朝全校が集まる集会がある地域がありました。僕の勤めていた横浜でもありました。
しかも月曜日でした。休み明けの子どもたちは、朝の支度ものんびりです。先生は、イライラします。
「早く行かないと遅れるよ。早く並んで!」
こうやって言っても、ダラダラしちゃいます。挙げ句の果てに先生が大きな声を出します。その時は並んでも、これでは自分たちが成長したわけにはなりません。
でも、どんな月曜日でも、「早く行こう!準備終わっていない子手伝うよ!」そんな風なチームに育つこともできます。
どうやってでしょうか?
それは信頼して任せることです。
「来週の朝会、先生準備で教室にみんなを迎えに来れないんだよ。みんなに任せても良いかな?」
「いいよ!」
「ほんと!ありがとう!みんなならそう言ってくれると思ったんだよ。嬉しいよ。」
「先生、何分までに行けばいいんだっけ?」
「25分だけど、みんなの目標はどうする?」
「20分にするよ!!」
「頼もしいね。じゃあ、どうやったら20分までに行けるか、話し合ってシミュレーションしてみない?」
「いいね。」
「じゃあ、みんなランドセルに全部入れて、学校来るところからやるよwww」
こんな風に、楽しみながらシミュレーションを自分たちでやってみます。すると、次の月曜日、どのクラスよりも早く自分たちで並んでいるものです。
「ありがとう!!ほんと助かったよ!」
ここで大事にしてたのは、本当に子どもたちの力を信じること。できなくても、チャレンジしてくれたことに感謝すること。(できた・できないで評価しない)
このケースでは、任せながらもボクはシミュレーションの時間をとったりアシストをしています。でも、こういう経験をたくさん積んでいくと、いつの間にか自分たちで相談するようになっていきます。
寺子屋は、子どもにとっては一つの旅なのかもしれません。子どもが育つ環境を今日もまた、子どもたちと作っていく。
その繰り返しです。